2005/12/16 Fri
兄や……兄や……
大財閥の社長だったパパンが……パリ上空で消息を絶ったとき……
きっと……きっとパパンは生きているから……また逢えるその日まで
一緒に頑張ろうねって……、手を取り合って誓ったよね……。
でもすぐに……亞里亞の大好きな兄やまでもが
記憶喪失になって……行方不明になってから……もう三年の月日が流れてしまったの……くすん。
亞里亞は立派なソプラノ歌手になって……ウィーンの舞台に立つことだけが夢でした……。
そこで見事なオペラを歌えば……新聞は写真入りで大きく書き立てる……。
そうすれば……お歌が大好きだった兄やの眼にもきっと留まって……
記憶を取り戻すに違いないの……。ウィーンで評判になれば……、
パパンの消息だって……きっと、きっと掴めるに違いないの……くすん。
でも……でもね……ウィーンで一番有名な音楽家のミューラー氏から招待状が届いた次の日にね……
お返事を書いた手紙を出そうと郵便局に行ったら……コワイ人が何人もいて……
周りが一面真っ赤な焔で包まれて……亞里亞の体が……亞里亞の声が……ああっ……


くすん……くすん……


それから……、亞里亞は本屋さんになりました……。
本屋さんってね……人々に本を届けるとっても素敵なお仕事なの……
世界中の本が大好きなヒトに……もう数え切れないほどたくさんのご本を送り出しました……。
亞里亞のお店は古い古いご本が一杯で……ここに辿り着くまでに
すでに何人もの本好きのヒトたちの手を経てきているの……。
だからね……亞里亞が送り出した本も……
きっときっと、そのヒトの手を離れて旅立つ日が来ると思うの……。
その中の一冊が……兄やのもとへと辿り着くこともあるはずなの……
そうすれば……兄やの切れた記憶の絲もたちどころにつながるに違いないの……くすん。
本って……とっても不思議で……。ヒトとヒトを結びつける役割もするの……。
開店してからのこの三年間でおふたりも……
『お父様の想い出が詰まった本がやっと見つかった』って……
ぼろぼろになった本にとっても喜んでくださった方がいたの……。
普通の本屋だったらとっくに捨ててしまうような本なのに、
亞里亞にはどうしても捨てられずに取って置いたら……
心から欲しているヒトのもとへともらわれていくこともあるの……。
ほんとにきびしい風雪を越えて……何十年も生き残ってきた本の
運命の不思議さを考えたら……きっときっとパパンのもとへと
亞里亞の本が届く日が来ると信じられるの……。
ウィーンの舞台にソプラノ歌手として立つのと同じくらい……
本屋さんって素晴らしいものなのよ…………。
だからいつまでも絶望ばかりしていられないの……
三周年目の今日からは絶望しすぷり書店として亞里亞は頑張る……。
見ててね……。亞里亞の世界で一番大好きな兄や……。




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